この記事でわかること

あきら✅ 手をつける順番を変えてから、国内学会で優秀学生賞
✅ 同じ進め方を後輩にも伝えて、一緒に研究を進めました
研究に時間はかけている。なのに発表が近づくと、手元に何も残っていない気がする。そういうこと、ありませんか。
この記事は、研究が思うように進まない学部生・院生に向けて、同じ状態から抜け出した経験をもとに、①調べる前にスライドの枠だけ作る、②粗いまま人に見せる、③結論を先に予想する、の3つをお伝えするものです。 内容は『コンサル一年目が学ぶこと』の考え方を研究に当てはめたもので、私自身がコンサルタントだったわけではありません。ただ、この順番に変えてから、研究は明らかに進むようになりました。
結論を先に言うと、変えるのは努力の量ではなく、手をつける順番です。
※本記事にはプロモーションが含まれます。
1週間の準備が、発表につながっていなかった
まず私の失敗から。準備した時間が、そのまま発表の中身になっていませんでした。
研究を始めたのは学部3年のときです。ゼミには院生が並んでいて、その前で発表するのが正直怖かった。とりあえず論文を集めるものの、量に圧倒されて深くは読めない。目星もつかないまま発表日が近づいて、直前になって「話す案がない」と焦る。そんなことを繰り返していました。
何回かやって、あることに気づきます。発表で実際に扱っていた論文が、前日や直前に見つけたものばかりだったんです。
論文を調べて、その論文についてまとめる作業はやっていました。それ自体はサボっていない。でも、その1週間は発表につながっていなかった。あれは何のための時間だったんだろう、と。
そこで順番を疑いました。先に発表スライドを雑でいいから作っておいて、どんなスライドが必要で、そのために何を調べればいいのかを考えてから論文を探す方が、早く進むのではないか。
空パケ:調べる前に、スライドの枠だけ作る
「空パケ」は、中身のないスライドの枠だけを先に並べたものです。タイトルと言いたいことだけを置いて、ボディは空のままにします。
コンサルティングの現場で使われている考え方で、空パッケージとも呼ばれるそうです。見た目を整える前に、話の筋が通っているかを確かめる作業です。
絵は作らない。文字を置くだけでいい
私がやっていたのは、こんな進め方です。
まず背景を、思いつく順に文章で書き出してみる。この段階で絵は要りません。そんなことに時間をかけている余裕もありませんでした。文字を置いていくだけです。
そのうえで眺めます。書き出した背景の中から、これとこれとこれが揃えば自分の研究につながる、という3つを選ぶ。あとは、その3つを裏付ける論文だけを探しにいきます。
こうすると、調べものが「必要だから調べる」に変わります。逆に、枠を作らないまま論文の山に入っていくと、膨大な情報に振り回されて、1週間があっという間に過ぎます。自分の頭が整理できていない状態で情報を浴びても、必要な一本を拾えないんですよね。
ただ、これは能力の問題ではなくて順番の問題です。枠は完璧でなくていいので、まず1枚だけ作ってしまえば、そこから先は自然と絞れていきます。
AIがある今でも、考えるところは自分の頭で
これはAIが使える時代になっても変わらないと思っています。
いま会社でも日常的にAIを使っていますが、何かを考えるところと、スライドを作る前に文章を並べるところは、いまも自分でやっています。順番はあの頃と同じです。
最初に考えるところ、面白いところは自分の頭で。そのあとの文献探しのような作業をAIで速くする。この使い分けができると、進み方が変わってきます。考える前からAIに投げると、どの情報が自分に必要なのか分からないまま、また情報に飲まれてしまう。逆に言えば、「何がほしいか」さえ自分で決めておけば、そこから先はAIにいくらでも速くしてもらえます。
ただ、就職先によってはAIの利用が制限されていることもあります。その環境で何ができるかは、別の記事に書きました。


なお、そもそも見せる相手や場がない、放置されていて誰にも見てもらえない、という段階の方もいると思います。その場合は、見せ方より先に話す場を作る方が早いです。別記事にまとめています。


Quick and Dirty:粗いまま、先輩と先生に見せる
「Quick and Dirty」は、速く・粗く出すという意味です。大枠のストーリーができた時点で、完成を待たずに人に見せます。
「こういう感じで考えています」と持っていくと、その場で指摘が返ってくるんですよね。「ここはもう少し説明しないと論理が飛んでいる」「その言い方だとおかしいんじゃないか」。
このやりとりを一度はさんでおくと、本番の資料を持っていくときに、周りが納得するものになっています。早めに見せておくと、あとで大きく書き直さずに済むというのが、この型のいいところです。
3つのうち、私の進め方を大きく変えたのはこれでした
素早く全体像を作って、周囲に見てもらう。もらったコメントを踏まえてすぐ作り直して、また持っていく。修正して、また見せる。何度も往復します。
これを繰り返すと、複数の人の視点が資料に入っていきます。私が出た学会は複数の教授が審査する形だったので、一人で磨いたものより、いろいろな人の指摘を通したものの方が刺さりやすかったのだと思います。賞もいただけました。
社会に出てからも、同じことをしています
仕事でも同じでした。
時間をかけたからといって、相手の要望に応えるものが自動的にできあがるわけではありません。どこかで方向のズレに気づく必要があります。そしてその意見は、早くもらえるほど直す量が少なくて済みます。
とはいえ、断片のメモを渡されても相手はコメントしづらい。逆に言えば、最初から最後まで一本の流れになってさえいれば、中身が雑でも意見はもらえます。だから、素早く、雑でも一度作り切る。一度作り切ってから見せる。これが現実的だと感じています。
仮説ありき:聞きながら、読みながら、結論を先に予想する
人の発表を聞くときも論文を読むときも、途中で「きっとこういう結論だろうな」と先に決めてしまいます。
これをやると、内容が頭に残るようになります。外れてもいいんです。予想を持って聞いているというだけで、話が自分ごとになって、関連する情報も入ってきやすくなります。
外れたときの方が、収穫があります
予想が当たったときは、発表者と近い筋道で考えられていたことになります。それはそれで自信になります。
面白いのは裏切られたときです。「なるほど、そういう観点を考えていなかったから、自分ではたどり着けなかったのか」と、自分の抜けがはっきり見える。
この抜けを見つけられると、次に自分がやる場面では先にそこを考えられるようになります。繰り返すうちに、仮説を立てる時間がどんどん短くなっていきます。
そうなると、まったく知らない分野のことでも一定の予想が立つようになります。しかもその予想が、大きくは外れない。社会に出て初めてのタスクを渡されたときにも、ある程度の精度で答えに近づけるようになりました。初めてのことへの負荷が下がるので、手を挙げやすくなります。
正直に言うと、合わない場面もあります
極端に高い精度を求められる場面では、Quick and Dirty は使いにくいです。
私自身の課題でもあります。速く一度作り切る力は身につきましたが、その分、一人で何度も見直して、完成度を最後まで引き上げる力は、あまりついていないと感じています。求められる水準が高い仕事だと、この一人で仕上げる力の弱さが出てきます。
Quick and Dirty が向かない場面もある、ということです。ただ、いま手元に何も残っていない状態からなら、まず速く一周させる方が先だと思っています。磨く力は、一周できるようになってから足せます。
後輩に伝えたら、回り道が目に見えて減りました
同じ進め方を後輩にも伝えてみたところ、隣で見ていても分かるほど、回り道が減りました。
空パケの発想が入ると、構成のおかしいところにすぐ気づいて直せるようになります。そのうえで必要な研究を調べにいくので、回り道が減ります。狙って読む分、一本の論文への理解もかなり深くなっていました。
「粗い状態でいいから見せて」と伝えていたので、途中のスライドを早い段階で見せてもらえたのも大きかったです。無駄な調べものや作り込みが起きる前に、方向を直せました。
そして本人が常に仮説を持って意見をくれたので、こちらも対等に議論できました。教える側と教わる側というより、お互いに学びながら研究が進んでいきました。後輩も賞を取りましたが、変化として大きかったのは賞ではなく、「次に何を調べればいいか」が自分で決まるようになったことだと思っています。ここは、いままさに手が止まっている人ほど早く変わるところです。
研究がまだ形にならないまま就活が近づくと、学会発表なしで戦えるのかが気になってきます。ただ、私が修士の面接で掘り下げられたのも、発表の実績ではなく過程の方でした。学会発表なしの修士就活で何を見られるのかを整理した記事があるので、そこが不安で研究に集中できていないなら、先に読んで気がかりを外しておくと、いま何を積むべきかがはっきりします。


まとめ:変えるのは努力の量ではなく、順番
3つに共通しているのは、先に枠を作って、粗いまま人に見せて、予想を持って向き合うという姿勢です。
- 空パケ:調べる前に、スライドの枠だけ作る
- Quick and Dirty:粗いまま、先輩と先生に見せる
- 仮説ありき:聞きながら、読みながら、結論を先に予想する
1週間かけた準備が発表につながらなかったあの頃と比べて、変えたのは順番だけです。時間を増やしたわけではありません。いま何も残っていない気がしていても、それは1週間サボったからではなく、順番がそうさせているだけだと思っています。
考え方のベースになった本がこちらです。研究だけでなく就職後にも通じる話なので、ここで一度目を通しておくと、次の発表の組み立てから変わります。
研究の時間そのものが雑用に削られているなら、先にそちらを軽くする方が早いです。メールや後輩指導を仕組みで減らす手順はこちらにまとめました。


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